
2009年02月27日

日米欧の保険会社の決算が概ね出揃いました(日本は4-12月期)。
米国ではハートフォードとプルデンシャルが2四半期連続で赤字、
メットライフやアフラックは黒字ですが、多額の含み損を抱えています。
欧州勢も、アクサは下半期が赤字。アリアンツやINGは通期で赤字でした。
10年前の日本の「生保危機」は国内生保の一人負けだったため、
外資系や損保系には追い風でした。
今回は欧米勢の厳しさが目立つので、外資系には逆風となっています。
経営悪化の中身は日本勢と欧米勢ではかなり違うようです。
日本勢では保有株式の価格が下落した影響が大きいのに対し、
欧米勢では不動産関連投融資の悪化や企業等の信用スプレッド拡大、
あるいは変額年金事業(主に米国)の赤字が業績を圧迫しています。
確かに、高格付け債券の価格がここまで下がってしまうとは、
おそらく誰も想像できなかったでしょう。
他方、日本勢の株式保有リスクはある意味わかっていた話なので、
非常に残念です。
あとはAIGの決算ですね。
政府の対応を含め、来週の発表(たぶん)に注目です。
2009年02月24日

3/5(木)18:00から損保総研でスピーチします。
タイトルは「金融危機と今後の保険業界」です。
損害保険特別講座へのリンク
参考テキストとして拙著「経営なき破綻」があがっていますが、
話の中心は先に発表された12月決算を踏まえた経営分析です。
生保だけではなく、損保の決算分析も予定しています。
しかし、ここまで株価が下がると、12月の水準が高く見えてしまいますね。
2009年02月21日

息子(中2)のテスト勉強に付き合いました。
課目は保健体育です。
今回のテスト範囲に「傷害の現状と原因」というのがありました。
「傷害は人的要因と環境要因がかかわり合って起こります」
「人的要因の対策は、①危険への知識、②状況の判断です」
「環境要因の対策は、危険な物や場所の点検・整備・改善です」
などと教科書に書いてあります。
これって、大学の保険論で学ぶ「リスクマネジメント」ですよね。
大学では「リスクの認識、回避、軽減、移転」などと
もう少し体系的に話をしますが、中学の保健体育でも
似たようなことを勉強するのですね。
さすがに保険は出てきませんでしたが...
2009年02月19日
ある保険評論家のかたが、朝日新聞の生保12月期決算(業績報告)記事を
酷評したという噂を耳にしたので、私も14日の新聞6紙を比べてみました。
各紙が取り上げた指標は次の通りです。
日経=最終損益、有価証券評価損、有価証券含み損益、SMR
朝日=最終損益、金融危機関連費用、準備金取り崩し額、実質純資産
毎日=最終損益、有価証券含み損益、SMR
読売=最終損益、有価証券評価損、保険料等収入
東京=基礎利益、経常利益、SMR、保険料等収入、新契約ANP
産経=最終損益、SMR
※SMRはソルベンシー・マージン比率、ANPは年換算保険料、
金融危機関連費用はキャピタル損益+変額年金の最低保証費用
今回の注目点は、当然ながら金融危機の影響です。
株安や円高、信用スプレッド拡大は「実現損」と「含み損益の悪化」
として表れるので、私は「最終損益」と「SMRまたは実質純資産」
という組み合わせが妥当かと思います。
SMRなのか実質純資産なのかは、大きな問題ではありません。
私だったらSMRを採用しますが、SMR=550%の大和生命が
半年後に破綻したことを考えると、実質純資産を選ぶ気持ちもわかります。
ただ、実質純資産は絶対額なので、相対評価ができないのが弱点です
(大手しか開示していないという弱点もあります)。
この組み合わせ以外だったのは読売と東京ですが、
読売は図表では「実現損」だけとはいえ、記事ではSMRに触れています。
他方、東京は基礎利益と経常利益なので、損益については「実現損」ではなく
金融危機の影響とは別のことを示したかったのでしょう
(経常利益を示した理由はわかりませんが...)。
あとは各紙の個性だと思うので、朝日新聞がなぜ酷評されたのか
私にはわかりません。
「わかりにくい」「凝りすぎ」という意見もあるでしょうけど、
「読者に何とか実態を伝えよう」という気持ちが私には感じられました
(成功しているかどうかはともかく)。
そういう自分だったら何を選ぶか、ですが、
最終損益、SMR、有価証券含み損益に加え、加工した指標を出そうと思います。
例えば、「純資産の部」「危険準備金&価格変動準備金」が
どれだけ減ったのかを見ると、金融危機の影響がよくわかります。
注として増資についてコメントが必要かもしれませんね。
絶対額だけではなく、SMRのリスク合計額で相対化するのが
いいかもしれません。
なんてことを一般紙ですると、酷評されそうですね...
2009年02月17日

「ろれつ」問題で中川昭一財務・金融担当相が辞意を表明しましたね。
政策の中身ではなく、こんなことで海外から低くみられるなんて、
本当に罪な大臣です。
もっとも、こちらは日経新聞ですが、
「(鳩山)総務相は『不透明にやってきたことを、なんとか認めてくれと
言っているようにしか読めない』『これは入札ではない」と酷評したが、
中身については『膨大すぎてまだ何も見ていない』とも話し(後略)」
という記事もありますね。がっかり。
ところで、けさの朝日新聞(1面)を見ていて気になったのが、
「ただ、中川氏はこの昼食会後(中略)ホテル内で財務省幹部や
一部記者と会食をしている」
というところです。
当初は「アルコールを飲んでいない」と否定した後に、一転して
この席での飲酒を認めた、いわば「疑惑の会食」なのですが、
記事が正しいとすれば、この会食に同席していた「記者」は、
自分のメディアでこの会食について報道したのでしょうか。
アナリストもそうですが、取材(調査)対象との距離をどうとるかは
非常に悩ましい問題です。
ただ、「誰のために情報を発信しているのか」というところが
やはり基本なのでしょうね。
※写真は大倉山公園の梅林です。今が見ごろです。
2009年02月15日
明日(16日)15:35からのニュース番組に登場予定です。
テーマは「損害保険業界」。
先週末に発表された4-12月期決算と3社統合計画が
話の中心になると思います。
NEWS FINEのHPへ
その4-12月期決算ですが、情報が限られているので
分析するのが結構大変です。
おまけに発表が13日午後に集中した(生損保とも)ので、
しばらくパニック状態でした。
今回の開示内容には不満が残りました。
例えば、9月以降の金融危機で保険会社の健全性に
関心が集まっているにもかかわらず、損保各社は
ソルベンシー・マージン比率やその内訳を公表していません
(この点、生保では一部の会社を除き、公表しています)。
有価証券の含み損益も連結ベースだけですし、
外貨建資産の残高もヘッジポジションもわかりません。
販売面では、自賠責保険の大幅値下げの影響を除いて
分析したいのですが、どうしても推計に頼らざるを得ません。
もっとも、生保は「前年同期比」がなく、単に当期の数字を
出しただけという会社が大半でした。これはひどい。
どうせ公表するのであれば、単にルールに従うだけではなく、
もう少し利用者のことを考えて出してほしいです。
2009年02月11日
いよいよ生損保の4-12月期決算が2/12、13に発表となります。
他の業界と違い、この二日間に集中しているのはなぜでしょうね。
10日の日経にコメントが載りました。
「三井生命、朝日生命、1000億円規模の最終赤字、株などで評価損」
という記事のなかで、
「(2001-03年)当時と比べて逆ざや負担も減り、契約者の解約も少ない。
生保危機のような状況ではない」
というコメントです。
もちろん、資産価格下落の影響は決して小さくないとは思いますので、
「生保危機」ではないにせよ、今回の決算内容や期末に向けた対応を
注意してみていくつもりです。
※写真は旧奈良駅舎です。
2009年02月08日
週末に奈良を1時間ほど散歩する機会がありました。
シーズンオフで人が少なく、すごく静かでした。
新薬師寺には今回初めて行きました。
ここには奈良時代の本堂と十二神将があります。
1200年以上も前のものが残っているなんて、言葉もありません。
その本堂の壁にステンドガラスがあったので、
正倉院の連想(当時のガラスがあります)から
これも当時のものかと聞いてみると、
「ああ、あれは数年前に作ったものですよ。
国宝なので作るときにいろいろ話をしたみたいですが」
とのことでした。
このシーズン限定の「鹿寄せ」も初めて観ました。
愛護会の人がホルンを吹くと、たくさんの鹿が走ってきます
(エサのドングリをもらえるのです)。
冬だけの行事なので、エサが少ない時期だからかと思いきや、
「この時期は観光客が少ないので、奈良市に頼まれているのです」
「シカは草を食べるので、冬でもエサは大丈夫ですよ」
とのお話。個人でもお願いすればやってもらえるそうです(2万円)。
いやいや、自分の思い込みだけで判断してはダメなんですね^^
2009年02月06日
保険の勉強会で大阪に来ています。
とりあえず私のスピーチは終わったのですが、どうだったでしょうか?
今週は国際的な保険監督官の会合(IAISの関係です)に
オブザーバー参加する機会がありました。
テーマは保険会社がグローバルに展開するなかで、
保険会社の健全性をどう確保するかというもの。
保険監督は基本的にローカルベースなので、今回の金融危機で、
国境を越えて活動する保険企業への対応が課題として浮上したためです。
個人的に興味深かったのがバミューダです。
税制メリットから保険会社はたくさんあるのですが、
規模の大きい監督組織があるとは知りませんでした。
何でもアクチュアリーが100人以上いるとのこと。
主に損保のリスクを見ている感じでした。
米国の影が薄いのも保険監督者の集まりならではかもしれません。
米国は州規制なので、全体を代表する組織としてNAICがあるものの、
日本の金融庁などとは性格が全く違います。
それに州の監督官にグローバルな規制を求めるというのも
かなり無理があるように感じました。
※写真は奈良公園です。ホルンを吹くと鹿さんがたくさん走ってきます。
2009年02月03日
本日(3日)昼の番組「昼エクスプレス」にゲスト出演しました。
テーマは損保3社の統合についてです。
この番組は主に個人投資家をコア視聴者としているそうで、
本来ならば株式アナリストが登場すべきと思うのですが、
なぜか私に声がかかりました。
日経CNBC・昼エクスプレス
普通のテレビ(地上波・BS)ではないので、
お話しした内容を簡単にご紹介しますと...
どういう方針で統合を進めるのか?
→ 三井住友海上HD の傘下に、あいおいとニッセイ同和の合併会社が入る。
持ち株会社に二つの大手損保がぶら下がる変わったスキーム。
統合の効果で企業価値は向上するか?
→ ①コスト削減が早期に進むかどうか、
②例えば日本生命の顧客を三井住友海上が開拓するといった
グループシナジーが働くかどうか、
③今後の海外事業、などに注目している。
今回の3社統合に刺激され、再び損保再編がおこるか?
→ 経営者が決めることだが、可能性はないとは言えない。
生保でもAIGの事業売却がある。
ただ、再編で業界が抱えている課題が解決できるとは考えにくい。
今回の統合で業界の活性化が進むか?
→ 規制緩和が進んだ今も、損保業界は古いビジネスモデルを引きずっている。
規模が小さい代理店を多く抱えていることからくる効率性の低さ、
多額の政策保有株式の存在などである。
再編とともに、新しい時代に合ったビジネスモデルの再構築が必要だ。
全部で10分ほどあったのでゆっくり話をしたところ、
ふと時計を見ると、残り12秒となっていて、最後はあわてました。
やはりテレビは難しいです。
植村信保(Uemura Nobuyasu)。
保険アナリストとして、主に生命保険会社や損害保険会社の経営分析を行っています。
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